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広島高等裁判所 昭和24年(う)401号 判決

被告人

山永完二

外一名

主文

原判決を破棄する。

被告人両名を各懲役一年三月に処する。

但し被告人両名に対し本裁判確定の日からいずれも三年間右刑の執行を猶予する。

訴訟費用中原審において証人塚本義夫に支給した分は被告人赤名勝に証人金田建一に支給した分は被告人両名の負担とし当審において証人金田建一、同新家梅雄に支給した分は被告人赤名勝の負担とする。

被告人赤名勝が食糧配給公団吉舍町代位配給所主任として主食類の保管、売渡その代金等の徴収保管等の業務を担当中(一)昭和二十四年二月十四日頃双三郡三次町食糧配給公団三次支所より受け取り、保管中の立替運賃現金七千九百三十九円六十七銭をその頃吉舍町において擅に生活費等に費消横領し、(二)同年四月十三日頃安田農業協同組合安田配給所より受け取り、業務上保管中の主食売上代金八千九百五十九円四十銭也の小切手をそり頃三次町において支拂人より支拂を受け、これを擅に生活費に費消横領したとの公訴事実については被告人赤名勝は無罪。

理由

弁護人馬場照男の控訴趣意第一の第一点について。

横領罪は自己の占有する他人の物を不法に処分するによつて成立する犯罪である。従つて自己の占有する他人の物を一つの横領意思発動のもとに連続して種々処分した場合には、その一連の所為は一つの横領行為として一種の横領罪を構成するのであつて、原判決も弁護人主張の判示事実について右の如く認定しておるのであり、かつその挙示の証拠によれば各判示事実を認め得られるので、原判決には所論のような誤認はなく、論旨は理由がない。

(弁護人馬場照男の控訴趣意第一の第一点)

第一点 連続した数個の行為として認定した違法がある。

原判決摘示の犯罪事実中第二の(一)の(1)(2)(4)(5)(6)(9)(10)(11)(13)(14)(15)(16)(18)及び第二の(二)によれば、それぞれ掲記の金額を「擅に生活費等に費消しもつて横領し」と認定して各項の金員をいずれも各一個の費消行為により費消した如く認定しおる。

原判決に費消の目的が生活費等と復数的に認定されていること及び経験からかかる費消行為が各認定事実に単一の一個の行為により成立つているとは考えられず、且つ記録全般を通して之を裏書きする証拠なく、かつて被告人の供述による「養父の負債支拂家屋の修理費、生活費の一部等に充てた」点からすれば、各認定事実毎の目的金員は連続的に数回乃至それ以上の復数行為により費消されたものとみるのが正当であり、この点において原判決は復数費消行為を個々に特定しないで一個の行為と認定した事実の誤認がある。

連続犯の規定の廃止された後である本件犯行当時費消行為をもつて横領行為とするならば、個々の費消行為別に認定されなければ、未だもつて特定の犯罪事実を認定したものとはいい得ない。

(註 本件は量刑不当により破棄自判)

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